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その頃、王宮の国王執務室では。
国王シュルツとハインツが、硬い表情で向き合っていた。
「…これが、昨日クラウス君がしたことの全てだ」
言いながらハインツは、手にしていたガラスの小瓶を、シュルツの前に置く。
中に入っている水は、元々フィオナの聖水瓶に入っていた聖水だ。
ハインツはこの水に“水映”をかけ、たった今シュルツの前で再生してみせたところだった。
聖水瓶はフィオナの服の下にあったため映像は撮れていなかったが、音声はしっかりと記録されていた。
フィオナが2人組の男に拉致され、クラウスに追い詰められて塔から飛び降りるまでの一部始終が、はっきりと。
シュルツはしばらくの間、右手で額を押さえて考え込んでいたが、やがて徐に立ち上がり。
「クラウスがしでかしたこと、誠に申し訳ない。フィオナ嬢に怪我がなくて何よりだった」
シュルツの言葉に、ハインツも小さく頷いた。
「どんな理由があって、クラウス君がこんなことをしたかは分からないが…今回の件は、処分の対象とするのが妥当ではないかね。これは、叔父としての提案でもある」
ハインツが、静かに語り掛ける。その瞳には、兄の心境を慮る憂いも宿っていた。
「クラウス君はこれまでも、女性関係で良くない噂が絶えなかっただろう。処分を受ければ経歴に傷が付くだろうが、クラウス君はまだ若い。これからいくらでも、信頼は取り戻せる。将来彼がこの国を背負うことになった時のために、自らをしっかり省みることが、今の彼にとって一番重要なのではないかな。」
「うむ…」
厳しい顔でシュルツも頷く。
「…どうやら私は、これまでクラウスに甘くし過ぎたようだ。あの子は早くに母親を亡くして、寂しい思いをさせた分、多少のことには目を瞑ってきたのだが…それが仇となってしまったな」
シュルツは肩を落とし、溜息を吐いた。
「クラウスは今、王宮主催の茶会に出席しているが…終わり次第、処分を言い渡そう。頭が冷えるまで、当面の間は謹慎させる。フィオナ嬢にも二度と近づかないよう、釘を刺しておこう」
シュルツの言葉に、ハインツも頷く。
しかしこの後、クラウスに処分が言い渡されることはなかった。
その頃、茶会では――とんでもない事件が、起こっていたのだ。
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