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それから数分後、フィオナが王宮の庭園に駆け付けた時には。
「フィオナ様…」
地面に力なく座り込んだサリアが、泣きそうな顔でフィオナを見上げる。傍らには、仰向けに倒れたクラウスの姿。
隣に屈み込んだフィオナに、サリアは震える手で、持っていたティーカップを差し出した。
フィオナが中を確認すると、カップの底には濃い紫色をした液体が。
フィオナはサリアの目を真っ直ぐ見つめて、頷いた。
「大丈夫、成功してる」
途端に、サリアの両目から安堵の涙が溢れ出した。
と、その時。
「う…」
クラウスが、小さな呻き声をあげる。
サリアもフィオナも、ハッとして振り向いた。
「クラウス様――クラウス様!分かりますか?」
クラウスの手を握り、サリアが必死に声をかけると。
クラウスはゆっくりと目を開き、そしてその瞳が、サリアを捉えた。
「サリア…?」
サリアは、泣き笑いで顔をくしゃくしゃにしながら、頷いた。
フィオナも、ほっと胸を撫でおろして、立ち上がる。
すると、そこへ。
フィオナに遅れること数分、ようやくリゼルも、庭園に到着したのだった。
「…もぉ、フィオちゃん、足速すぎ…」
「リゼルちゃん、置いてけぼりにしちゃってごめんね」
ぜいぜいと肩で息をするリゼルの背中を、フィオナが優しく擦ってやる。
最も、フィオナの足が特別速いわけではなく、こんなに重い銃を背負って走っていたら、速度が落ちるのも無理はないのだが。
「…そうだ。リゼルちゃん、あのね…」
フィオナがリゼルに話しかけると、リゼルは腰に巻いたポーチから何やら取り出し、フィオナに差し出す。
その後、クラウスはすぐに医者の診察を受け、命に別状はないとのことだった。
その報せを木組みの家で聞いて、フィオナたちが一安心したのも束の間――翌日になって、信じ難いニュースが飛び込んで来たのだった。
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