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13.謀略
「…エリオス様、今何て?」
フィオナは危うく、手にしていた椀を取り落としそうになった。
「レイモンド嬢が、投獄されたらしい。クラウスを毒殺しようとした疑いがかけられている」
当直明けで帰ってきたエリオスから聞かされた事実に、朝食を取るフィオナの手はすっかり止まってしまった。
「そんな、嘘です…!サリア様は、クラウス殿下を解毒して、命を救ったんですよ!?」
フィオナが言うと、エリオスも驚いた顔をして。
「救った?クラウスは、医師の治療で一命を取り留めたんじゃないのか?」
「いいえ!殿下を助けたのは、間違いなくサリア様です!」
フィオナは昨日、サリアの光玉が飛んできてからの出来事を、エリオスに話して聞かせた。
エリオスは難しい表情をしながら、顎に手を当てて俯く。
「どういうことだ…?騎士団に入った情報では、レイモンド嬢の解毒の話なんて一言も…むしろ王宮側は、クラウスが倒れた当時、隣に座っていたレイモンド嬢が、隙を見てカップに毒を入れたと考えているようだが」
「どうして…サリア様がそんなことするはずないのに…!」
動揺しながらも、フィオナは徐に立ち上がり。
「私、今から王宮へ行って証言してきます。サリア様を今すぐ釈放してもらわなきゃ…!」
そう言って駆け出そうとするフィオナの手を、エリオスが掴んで止める。
「待て、フィオナ。…この事件、何かがおかしい」
エリオスはフィオナの両肩に手を置き、真っ直ぐに向き合うと。
「考えてみれば、隣に座っていたというだけで疑いをかけるなんて根拠が薄すぎる。レイモンド嬢はクラウスの正妃候補だ。投獄するとなれば普通、王宮も慎重を期すだろう」
エリオスと見つめ合ううちに、フィオナも少しずつ、冷静さを取り戻していった。
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