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夕刻。
クラウスは自室のベッドに横になり、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
ここのところ激務が続いていたので、一日寝て過ごすなど久しぶりだ。
幸い毒の後遺症も残らず、起き上がっても何ら問題はないのだが、とてもそんな気力はなかった。
――コンコン。
唐突に響いたノックの音。一瞬の後、開いた扉の向こうに居たのは。
「…エリオス」
部屋に入るなり、エリオスはクラウスを一瞥し。
「…具合はどうだ?」
枕元までやってきたエリオスから、クラウスは視線を外し、再び窓の外を眺める。
「要件は何だ。単に見舞いに来たわけじゃないだろう」
エリオスは、近くの椅子にゆっくりと腰を下ろした。
「…確かめに来た。お前が一体、何を考えているのか。」
エリオスの射るような瞳にも、クラウスは表情を変えない。
「あんな真似をして…フィオナを、どうするつもりだったんだ?」
しばらくの間、クラウスは口を閉ざしたままだったが。
「…別に、どうするつもりもない。ただ試してみたかっただけだ」
「試す?」
エリオスが怪訝そうに訊き返すと。
「世がもてはやす“愛”などという代物が、どれだけ確固たるものなのかどうか。」
ここでクラウスは、にやりと皮肉気な笑みを浮かべて見せた。
「フィオナのお前に対する“愛”も、少しつつけば壊れると思ったんだけどな」
「そんなことのために――一歩間違えれば、フィオナは大ケガじゃ済まなかったんだぞ!?」
気が付けばエリオスは、立ち上がってクラウスの胸ぐらを掴んでいた。
二つの視線がぶつかり合う。
…が、クラウスはすぐに、無気力に横を向いてしまった。
「…フィオナには、申し訳ないことをしたと思っている。まさかお前のために、身投げまでするとは思いもしなかった」
クラウスの様子に、エリオスも手を離すと、苦い表情で椅子に座り直す。
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