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学園で優秀な成績を収めれば、卒業後には平民であっても王国の重役に抜擢されたり、上位貴族の婚約者に選定されたりと、多くのチャンスを得ることができる。
とはいえ、第一王位継承者の正妃に平民のフィオナが選出されるなど、歴史上類を見ない大抜擢であったのだが…
完全に思考が停止してしまい、立ち尽くすだけのフィオナをよそに、クラウスは高らかに、一人の少女の名を呼ぶ。
「サリア・レイモンド伯爵令嬢。こちらへ」
呼ばれて、その場にいる全員の視線が集まる中、その少女は優美に、クラウスのもとへと歩を進めた。
「私は、フィオナを破って学年一位の栄光を手にしたこのサリアと、改めて婚約を結ぶ。彼女が正妃教育を終えた暁に、婚礼の議を執り行う予定だ」
(サリア様が…)
白銀色の繊細な巻き毛に、エメラルドの瞳の可憐な少女。学園の同級生で、よくよく見知ったサリアの顔を見るなり、フィオナの頭はようやく回転を始めた。
次期国王の最有力候補であるクラウス王子の婚約者の座を追われ、フィオナは――
(――私、もう……正妃にならなくていいの!?)
そう、フィオナにとって婚約破棄はまさに――奇跡としか言いようがなかった。
心に燦燦と光が差し込み、喜びで緩みそうになる口元を、慌てて手で隠す。
クラウスの隣で凛と佇むサリアの姿が、フィオナには女神のように輝いて見えた。
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