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「お待ちください」
突如としてホールに響き渡った、第三の声。
会場の全員が振り返る中、ゆっくりと歩いてきたのは。
「エリオス様…!」
漆黒の髪に、ラピスラズリの瞳の青年。年の頃はクラウスと同じくらいだろう。
エリオスはフィオナと並ぶと、安心させるように小さく微笑む。
そして壇上のクラウスを見据え、フィオナを守るように前に立った。
「エリオス…何故お前がここに?」
その姿をみとめるなり、穏やかだったクラウスの顔は、一変して冷ややかに張り詰めた。
エリオス・アイゼルハイム。王族の一員であるアイゼルハイム公爵家の息子で、現国王の甥にあたる。つまり、クラウスとは従兄弟同士だ。
王族の子息である彼も、当然王位継承権を有していた。しかし2年前、この学園を卒業するや、自ら志願して権利を返上し、王国魔法騎士団への入隊を果たした。
王として国のトップに君臨するより、国中を駆け巡って民たちに奉仕する道を選んだのである。
そんなエリオスを「変わり者」と称する者も一定数いたが、その正義感の強さに整った容姿も相まって、憧れを抱く生徒も多い。
フィオナも、その内の一人だった。
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