もう一度あなたの手を取れたなら

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 蓮は私の顔を正面からじっと見つめた。前から思っていたけど、蓮は本当に綺麗な顔をしている。 「美哉はさ、俺の運命の人なんだ。俺の前世での恋人」 「えっ? もしかして『お春』さん?」  蓮は頷いた。 「俺は勘太って名前の町人で、子供の頃から仲良くしてたお春とは将来を誓った仲だった。だがとある大店(おおだな)のドラ息子がお春に横恋慕してさ。金にモノを言わせてお春を奪い取ったんだ」 「さっき、もう一度奪われたりしないって言ってたけど……」  蓮は顔をしかめ、吐き捨てるように言った。 「あの男はそいつの生まれ変わりだ。あの顔は間違いない」  そんなバカなことがあるんだろうか? 前世で因縁のあった三人が、再び交わってしまうなんていう偶然が。 「本当はちゃんと就職して金を貯めて、美哉にふさわしい男になってから告白しようと思ってた。でも見合いするって聞いたから……気になって後をつけて来たんだよ。そしたら見合い相手があいつだったから、もう黙って見てるわけにはいかなかったんだ」 「でも、私と大川さんは同い年なのに、どうして蓮くんは年下なのかしら」 「二人は結婚した後に火事に巻き込まれて死んだんだ。俺が死んだのはその十年後。だから、十歳差があるんだと思う」  光一とは前世で会っていたから、身上書の写真を見た時に懐かしい気持ちがしていたのか、と私は腑に落ちた。 「前世を思い出したのは蓮くんだけなのかな。大川さんは何も言ってなかったよね」 「たぶん。でもアイツは、思い出していなくても美哉のことがやはり好みなんだ。一目惚れだって言ってたもんな」  大きく息を吐き出すと、蓮は私の手を取った。 「美哉。俺、ちゃんと大学行って、就職する。だから、すぐに婚姻届を出そう」 「でも、蓮くんまだ若いのに。大学を出てもまだ気持ちが変わってなかったらでいいよ。蓮くんの可能性を縛りたくない」 「駄目だよ。その間に美哉を他の人に取られたら死んでも死にきれない。一刻も早く結婚したいんだ。今日、おじさんとおばさんに挨拶に行く。美哉を下さいって」  私は、とても嬉しかった。ずっと抑えていたこの気持ちを、もう隠さなくてもよくなったんだと思って。
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