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彼女からの僕への告白と同時に、僕は彼女から一冊の日記帳を渡された。
それは――、
「お、重い……」
とてつもなく重かった。
どこにでもある一冊の日記帳が、なぜ、ここまで重いのか!?
急に僕は背中に寒気を覚え、その日記帳を開き、日記を斜め読みした。
日記は特別だった日に書くものだ。
特に思い出せることがなかった一日を書き続けて、それが三日も続けば、その日あった出来事を書くことに飽きてしまう。
日記は三日坊主と言われることがあるけど、ほとんどの人にとっては、日記をつけるとはそういうことなんだろう。
でも、彼女の場合はそこが違った。毎日のように日記を書いていた。
僕との思い出を綴っていたんだ。彼女の一方的な思い出だけどね。片思い――ってやつさ。
彼女は僕に恋をしていた。だから、彼女は僕のことを日記に書いていた。毎日毎日、毎日。
彼女にとってここ一年間は毎日が特別な一日だったということだ。
彼女が一体どれだけ僕のことを好きなのか。
この日記帳を持ったときに感じた重さは、そのせいだと思った。
日記帳の最後の一枚のページ、今日のページだけがまだ空白だった。
そのページに今日の出来事が書かれたとき、この重さがどうなるか……。
「私の思いの重さ、わかってくれた? もうずっと一緒だよ。私のこと、しっかり持って支えてね」
「うっ、わあああああっ!?」
でも、僕は急に恐ろしくなってきてその場から逃げ出してしまった。
僕は逃げ走りながら日記の中身をパラパラと読んでみた。
日記は僕のことでいっぱいだった。
僕の好きなところ。嫌いなところ。かわいいところ。にくいところ。生真面目なところ。ふざけているところ。あんなクセ、こんな態度。僕の知らない僕が全部書いてある。
恥ずかしいやら情けないやら。
まるでだらしがない自分を鏡で見ているような気持ちになってきた。
怖いもの見たさに、つい、しかも、よく見ると、それらには『愛』の言葉が添えられていた。
「ほへええっ!?」
僕は思わず叫んでしまった。そして、怖くなって、とうとう、その日記帳を床に投げ捨てた。
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