2人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
もうクリスマスになるのかと、朝露に濡れた窓を開けた。
想像より冷淡な空気は、私に鳥肌をつける。
私は微笑んだ。
見るだけで広がっていく世界。寂寞でも、寂寥でもない。
幼い頃の情景が、冬になってようやく沁みる。
夏のように、浮立つ心を隠すように鳴く蝉時雨は、聞こえない。
冬特有の、しんまりとした、別れしか生まない空気がただ苦い。
願わくば、この沈む部屋が、いつかの憧憬になってほしい。
生まれたばかりの星は、光る背中を追った。
初めての夜が、私にとって致命傷だった。
朝がいつまでも続くと思っていたのに。
暗い世界に、閉じこめられただけで、明るい光を求めた。でも、
春も秋も冬も夏も、心がないように、過ぎ去っていく。
春を願っている人もいて、冬が終わってほしいと願っている人もいる。
星が落ちそうなベンチには、夏空に洩れた花火が麗しく、ときめきを遺しながら、反射した。
夢が始まった時間を憶えていないように、私はいつから恋をしているのか、分からなくなってしまった。
朝も昼も夜も、過ぎて、バトンタッチしていく。
夕日が眩しいのは、朝日が煌めいているのは、死ぬことを少なからず考えているから。
こんな弱くて、頼りなくて、意気地なしの私に、空の友情をまんべんなく見せてくれるのは、嬉しい。
訪れない未来など、溜め息と混ざった愚痴みたいなものだ。
いつの間にか失われている、この気持ちは、今どうにかしてほしいんじゃなくて、抱きしめて離したくないだけ。
潮風が啾々と笑う駅のホーム。
私は、泣いてしまった。ノスタルジックな目の前に繰り広げられた景色が、不甲斐ない私を、無差別に、照らしてくれたからかもしれない。
「ありがとう」と言う感謝が、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた天の川に、
私達は、ここだよと、光って消えた。
最初のコメントを投稿しよう!