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「南ちゃん、お風呂どうぞ」
拓也とリビングで並んでテレビを見ている間も南は緊張しっぱなしだった。
瀟洒なその部屋自体に落ち着かなかったし、南は付き合った男性の母親に会うという行為をしたことがなかった。
母親の一挙手一投足が気になって仕方がない。
そんな南に母親から声がかかる。
「えっ、お風呂!?」
「入るわよね?お風呂」
母親がにっこり笑う。
「えっと…その…でも…」
「入っといでよ、南。服は僕のパジャマ貸してあげるから」
「私のでよければ使っていない下着もあるわよ?」
母親がそう提案してくる。
二人に衣服を押し付けられ脱衣所に押しやられる。押し付けられた服を開いてみるとロンT一枚だけだった。こんな姿を母親に見せるつもりなのか拓也は…!
一体何を考えているんだ…足が丸出しになってしまうじゃないか。少しは私の顔も立てて欲しい、そんな風にちょっとだけ涙目になる。
熱い湯船に浸かりながら南はこれからのことを考える。とりあえずお母さんには気に入られたようだ。
第一関門突破と言えよう。
問題は第二関門だ。
拓也はお母さんがいる家で本当にするつもりなんだろうか…そんなこと考えただけで恐ろしいのに…拓也の考えていることがわからなくて南はブクブクとお湯に沈んだ。
出来る事ならこのままお風呂から出たくない、そう思った。
南は意地で長湯した。
拓也のバカ!
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