困った変人に惚れられてしまいました。

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「たのもー!矢野部長はいるか?」  突如フロアに響いたその聞き覚えのある声に南が「ゲッ」と声を漏らす。 「私だけど?君、どこの部署?」  視線をずらすとやはりというかなんというか先程の男が立っていた。  矢野が部長席から立ち上がって拓也に近づいていく。南は正直、矢野の顔も見たくなかったが気になって二人に視線を向けてしまう。 「編集部のエース、西川拓也だ」 「は?それでなんの用?」 「お前、笠原 南くんを不倫で弄んだだろう?」  最悪、ドンピシャ!  南が頭を抱える。  皆の視線が一斉に南に集まる。 「奥さんとは別れるとかなんとかいってさぁ?」 「言いがかりはよしてくれ!」  矢野が焦って弁解する。 「裏は取れてんだよ。南くんに謝りたまえ」 「だから俺はそんなことしてない!」  矢野は必死に己の身の潔白を叫ぶ。  その姿に、南は恥ずかしさと共にだんだんとイライラしてきた。しらばっくれる矢野に傷つけられた自分はどうなるのだ。  バンッ!とデスクを叩いて立ち上がる。 「おい、矢野!人のこと弄んどいて、どの口が言ってんだコラァ!」  南はブチ切れた。 「南…何言ってんだよ…」  突然ブチ切れた南に矢野が慌てる。 「何言ってんのはテメェだろコラァ!」 「南…!」  突然豹変した南に矢野がオロオロし始める。  もうこの際だから全部ぶちまけてしまえ、そう思った。 「奥さんと別れるんじゃなかったんですか、あぁん?」  南が矢野に詰め寄る。 「悪い、悪かったよ!南!」 「私の時間返せよコラァ!」  本当に、矢野との時間はなんだったんだ。 「すまない南…すまなかった…」  南の鋭い剣幕にすっかり威勢をなくしてしまった矢野は南に謝り始めた。  職員たちからは部長サイテーなどのやじが飛んでいる。  矢野は終始俯いていた。  西川拓也だけが満足げに頷いていた。なんでお前が満足げなんだ。謎だ、謎すぎる、西川拓也。南は西川拓也に不審な視線を送った。  しかし本人は全く気付いていない。  バカなの?ねぇ、バカなの?
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