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梨花は、うつむいて
「いいえ! 違うの! あんな昔の過ぎたことはどうでもいいのよ。こんなこと言うつもり無かったの・・・でも、私だって女の子よ。プロポーズに夢を持ってるのよ」
「夢?」
梨花は詩を朗読をするようにゆっくり顔を上げて
「雲ひとつない真っ青な空の下、白波立つ海を背にして、私の手を取って・・・とか・・・夜景が煌めく窓辺の席のレストランでフレンチ食べて、デザートにチョコレートケーキ、いや? チョコレートはダメ。柚子シャーベットがいいかな? それからおもむろに口を開いて・・・」
「何の妄想?」
「はぁ? 妄想?」
翔太の顔に近づき睨み
「そうね! 翔太だと妄想にしかならないわよね! でもね、本人より親に先にプロポーズする人なんて、翔太しかいないわよ!」
梨花は頬を膨らまして拗ねた。
それを見た翔太はニヤけながら、ジャケットのポッケットから小さな箱を出しひざまずき
「青空も白波も、夜景眺めながらのフレンチもないけど、俺と結婚してください。これから、ずっとここ向日葵で一緒に暮らしたい」
「えっ?」
「えっ?って? 早く返事」
梨花は目を丸くして
「は、はい! 宜しくお願いします」
翔太はしてやったりと
「これでプロポーズ成立だな! 箱開けろよ!」
翔太の手から箱を受け取り開けると、梨花の誕生石アクアマリンの可愛いネックレスが入っていた。
「それ、俺の初めての給料で買った。駅で結婚してるって勘違いした日に、渡そうと思って買った。でも、渡せなくて捨てようと思ってた。良かった! 捨てなくて」
梨花は霞んで見える翔太に
「着けて!」と胸に顔を埋めた。
梨花の首元にアクアマリンが輝くと、翔太は抱きしめそっとキスをしたが・・・
「おい! スゲー! チョコレート味だ」
「だから、チョコレートケーキじゃなくて、柚子シャーベットなのよ」
???
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