殺人犯の忘れもの

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「本当にいいのかい? 奥さんの死体をどこかに捨てて、そのまま逃げてしまって?」 「ああ、なるべく遠くの、見つからないところに捨ててくれ。穴でも掘って埋めてくれりゃあ、なおいい」 「わかった。そうする」  男は、これで解放されるとあって、ほっとしたようにうなずく。 (まあ、こいつは、十中八九、穴なんて掘らないだろうな)  そう思いながら、おれはアコードが出ていくのを見送った。  森が迫って少しカーブするのぼり坂が続いている。車の赤いテールランプが、そこをのぼって遠ざかっていく。  おれはポケットに手を入れた。  スイッチを押す。  数百メートル先で、爆発が起こった。車がまっ赤な炎につつまれた。  一瞬遅れて、ドカンという爆発音が聞こえた。  もちろん、あの男はもう生きていないだろう。 「さてと……」  と、おれはひとりごちる。  保安官にどう説明するか、バーボンでもすすりながら考えることにしよう。  おれはきびすを返すと、家の戸口へと向かった。                              〈了〉
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