第一章 ポトフの良い香りに誘われて

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わたしはその美味しそうな匂いに吸い寄せられ足が動いた。なんて食欲をそそる香りなんだろうか。 食べたい、食べたい、わたしの足はふらふらその美味しそうな匂いに導かれるかのように進む。 どんどん良い香りがふわふわと漂ってくる。ついに辿り着いたようだ。これは野菜を煮込んだ匂いだ。 わたしは、ちょっとレトロな雰囲気が漂う外観のカフェの前に立っていた。 木製の扉の横に小さな手書き看板が立てかけられている。黒板になっていてチョークで、 『さやカフェへようこそ! あなたの望みを叶えてあげます。さやさんの笑顔と美味しい料理があなたをお待ちしていますよ。うふふ』と書かれていた。 うふふって可愛らしいなと思いながらわたしは、木製の扉を開けた。 ドアベルがカランコロンと鳴った。 「さやカフェへようこそ!」 上下紫色のスカートスーツをビシッと着こなした長い黒髪が綺麗な女性が両手を広げ微笑みを浮かべた。 この世のものとは思えないほど美しい女性がわたしを出迎えてくれた。
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