第一章 ポトフの良い香りに誘われて

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「お待たせしました~ご注文はお決まりですか? うふふ」 店員さんはにっこりと微笑みを浮かべた。唇に塗られた赤リップがキラキラと輝いている。 「野菜を煮込んだような良い香りがするんですけど何のメニューですか? わたしその料理を食べたいです」 「うふふ、ポトフですよ。気づいて頂けたんですね」 店員さんは口元に手を当てて艶やかな笑みを浮かべた。 「はい、とても美味しそうな匂いでしたので」 わたしは答えながら店員さんの美しい微笑みに見惚れてしまった。なんだか吸い込まれそうな美しさだ。 「では、お客様、ご注文はさや特製のポトフにされますか?」 「はい、さや特製のポトフをお願いします」 「ご注文ありがとうございます。うふふ、さや特製のポトフを選んで頂けるなんて嬉しいです。少々お待ちくださいね」 「はい、あのさや特製のポトフのさやは店員さんのお名前なんですか?」とわたしは思わず尋ねてしまった。 「うふふ、はい、わたしの名前ですよ。わたしはこのカフェのオーナーの森口さやと申します。ようこそ~」 「さやさんはオーナーさんでしたか。わたしは熊沢(くまさわ)未央(みお)と申します」 わたしは、思わず自分の名前を名乗ってしまった。 「熊沢未央さんですか。うふふ、可愛らしいお名前ですね。では、未央さん少々お待ちくださいね」 さやさんはそう言ってキッチンに戻った。わたしはさやさんの艶やかで美しい黒髪ロングヘアをじっと眺めた。
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