第二章 手紙

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「わたし、お母さんの娘になれて良かった」 「こちらこそ未央ちゃんがわたしの娘で嬉しいわ。あなたは、わたしの娘なのよ」 わたしとお母さんは見つめ合う。さや荘のこの空間にいると素直な気持ちでいられる。そんな気がする。 あの手紙のことや電話のことなど思いきって話してみようかなと考える。でも、やっぱり心配なんてかけたくないと思ってしまう。 血が繋がっていなくても本当のお母さんだと思っている。わたし達は家族なんだと。 わたしは本当のお母さんのことを覚えていない。お父さんに尋ねると産みの母親は、出ていったとちょっと悲しそうな表情で答えた。 そんなお父さんの顔は見たくないのでわたしは詳しく尋ねない。 「未央ちゃんが良い環境で暮らしているのでお母さん安心したわ」 お母さんは穏やかな表情で笑う。 さや荘は気に入っているけれど、本当は良い環境じゃないんだよ。黒コーデの女性が付きまとうし謎の不気味な手紙も届くんだよ。 それをお母さんに言いたい。けれど、お母さんの安心した顔を見ると何も言えない……。言えないよ。
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