第二章 手紙

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今、さやカフェにいる。 わたしとお母さんは、さやカフェの窓際にある二人掛けの席に向かい合って座った。 「カフェも素敵な雰囲気だね」 お母さんはさやカフェの店内を見渡し頬を緩めた。さや荘の一階にある喫茶店がものすごく気になるとお母さんは目を輝かせ言ったのだ。 「うん、さやカフェは居心地がとても良いよ」 「木の温もりを感じる空間にレトロな調度品ね。こんな素敵なカフェがアパートの一階にあるなんて未央ちゃんが羨ましいわ」 お母さんは視線をわたしに戻し羨ましげに見た。 「えへへ、良いでしょう」 わたしがにっこり笑いそう答えたその時、さやさんがわたし達のテーブルに向かって歩いてきた。 「お冷やです」とさやさんがテーブルにグラスを二つ置く。 さやさんを見上げると今日も唇の赤リップがキラキラと輝いていた。 「うふふ、未央さん。お母様を連れて来てくれたのね」 さやさんは口角をキュッと上げ微笑みを浮かべた。 「はい、母がさやカフェに是非行きたいと言いましたので」 わたしがお母さんに視線を向けると、「未央の母です。娘がお世話になっています」とお母さんはそう言って頭を下げた。 「このさやカフェのオーナー兼さや荘の管理人の森口さやです。こちらこそいつも未央さんにお世話になっています」 さやさんも頭を下げた。そして、顔を上げたさやさんは艶やかな笑みを浮かべていた。
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