第二章 手紙

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入ってきた人物を見てわたしは目を大きく見開き、心臓がドクンと飛び跳ねた。 「さやカフェヘようこそ!」 さやさんが厨房から出てきてその人物を迎え入れた。けれど、さやさんも一瞬不快そうに顔を歪めたことをわたしは見逃さなかった。 「お好きな席にどうぞ」 その人物はゆっくりと歩きわたしとお母さんが座っている窓際にある二人掛けのテーブル席の隣にあるカウンター席の真ん中に座った。 わたしは、さやさんとその人物こと黒コーデの女性をじっと眺めた。 また、黒コーデの女性がさやカフェに来店した。もう顔も見たくないのに……。ここにやって来るのは黒コーデの女性の勝手ではあるけれど。 だけど、同じ空間にいるだけで気が滅入るしそれに不気味でゾクゾクする。嫌だ、嫌だ。帰ってよと心の中でわたしは、叫ぶ。 「未央ちゃん」 「え? あ、なあにお母さん」 「ううん、さやさんとお客さんをじっと見ているからどうかしたのかな? と思ったのよ」 お母さんはさやさんと黒コーデの女性に視線を向けそれからわたしに視線を戻した。 「なんでもないよ」
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