第二章 手紙

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「美味しいわ。未央ちゃんが言うようにほっぺたが落っこちそうだわ」 お母さんがフォークでナポリタンパスタをくるくると巻き取り口に運ぶ。 その表情は本当に美味しくてたまらないといった感じだった。 「やっぱりさやさんのナポリタンパスタは美味しいよね」とわたしは言った。 黒コーデの女性のことが気になるもののわたしもカレーライスをスプーンですくう。 口に運ぶとまろやかなバターと牛乳が加わったコクのあるクリーミーなカレーだった。鶏肉もジューシーで最高だ。 「うん、カレーライスも美味しいよ」 わたしもさやさん特製のカレーライスに満面の笑みを浮かべた。美味しいものを食べているこの瞬間は嫌なことが忘れられる。 「うふふ、カレーも食べたくなるわね」 お母さんがわたしのカレー皿をじっと見た。 「一口食べる?」 「あら、いいの?」 「どうぞ」 「では、遠慮なく頂くね」 お母さんは、カトラリーケースからスプーンを取り出しわたしのお皿に盛り付けてあるカレーを右端からすくう。 そして、口に運ぶ。 「まあ、まろやかでコクのあるカレーね」 お母さん笑顔をこぼす。 「わたしのナポリタンパスタも一口食べる?」とお母さんが言ったその時。
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