第二章 手紙

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黒コーデの女性がわたしの目の前を通っただけなんだけれど、なんとも言えない黒い異様なオーラを感じた。 そんな黒コーデの女性と目が合った気がした。けれど、黒のサングラスをかけているので定かではない。 やっぱりこの人は不気味だ。 黒コーデの女性はわたしの前を通りすぎレジカウンターへ向かう。わたしはその背中をじっと眺めた。今日も黒ずくめで真っ黒だ。 「うふふ、ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています」 さやさんの艶やかな声が黒コーデの女性を見送る。カランカランとドアベルが鳴り黒コーデの女性の姿が扉の外へと消えた。 わたしはほっとし胸を撫で下ろす。 「なんだか静かな女性だったわね」 「え?」 「今帰った女性のことよ」 「あ、うん、そうだね……」 「まあ、一人で来てるんだから静かなのは当たり前なんだけど何て言うのかうまく言葉にできないけれど、人間離れした人ね」 お母さんはそう言って黒コーデの女性が出ていったドアに視線を向けた。 そのドアの向こうが異様な空間のような気がして身震いしてしまう。
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