第二章 手紙

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この日の夕飯は炊き込みご飯だった。 わたしはテーブルに並べられた炊き込みご飯と肉じゃがとお味噌汁に目を輝かせた。 「美味しそう」 「未央ちゃん炊き込みご飯好きだったわよね」 「うん、大好きだよ」 お箸を炊き込みご飯に伸ばし口に運ぶ。ご飯に鶏肉やごぼうなどの具材の味が染み込みそれはもう美味しかった。お箸がどんどん進む。炊き込みご飯にできたおこげも最高だ。 「う~ん、美味しい。お母さん、おかわり」 久しぶりに食べた母の味は最高だった。 「うふふ、未央ちゃんのその笑顔久しぶりに見たわ」 わたしが差し出したお茶碗を受け取り、お母さんは微笑みを浮かべた。 結局、炊き込みご飯を五杯もおかわりしてしまった。子供の頃から炊き込みご飯が大好きで何杯も食べることができた。 「そんなに喜んで食べてもらえると嬉しいな。もっと、家に帰って来なさいよ」 「うん、わかった。お母さんのご飯食べに帰るね」 「もう未央ちゃんってばご飯だけじゃなくてわたしに会いに帰って来るのよ」 お母さんは可笑しそうに笑った。 「うん、そうだね。今日はありがとう。久しぶりにお母さんの顔を見て元気になれたよ」 そう、お母さんの味の染み込んだ炊き込みご飯も甘くてほくほくほっこりな肉じゃがとそれから優しくて穏やかな笑顔にわたしは癒された。 嫌なことも忘れて今日はゆっくり眠れそうだ。
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