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その日の夜。わたしは夢を見た。夢の前半は両親と和やかに食卓を囲み幸せだった。子供の頃が懐かしくて夢の中でわたしは涙を流しそうになった。
動物園、遊園地、海にプール。わたしは子供でお父さんとお母さんは今よりずっと若かった。幸せな時間だった。今も不幸ではないし、幸せなはずなんだけれど……。
なんだか心が乾く。
それにポストに投函される手紙やわたしの前に現れるあの黒コーデの女性が不気味だ。
夢の中でもそんなことを考えていると、子守り歌が聴こえてきた。
後半は脅かされる夢だった。
『ねんねころりよおころりよ♪ ぼうやは良い子だねんねしな』
あの公衆電話から流れてきた子守り歌と同じだった。
『ぼうやのおもりはどこへ行った あの山こえて♪』
夢の中まで子守り歌だなんて……。やめて! その子守り歌をわたしに聴かせないで。
『里へ行った♪』
だから、子守り歌なんて聴きたくないんだってば。夢の中でわたしは叫んだ。
ねえ、お願いだから聴かせないで。
どうして、わたしを苦しめるの?
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