第二章 手紙

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その日の夜。わたしは夢を見た。夢の前半は両親と和やかに食卓を囲み幸せだった。子供の頃が懐かしくて夢の中でわたしは涙を流しそうになった。 動物園、遊園地、海にプール。わたしは子供でお父さんとお母さんは今よりずっと若かった。幸せな時間だった。今も不幸ではないし、幸せなはずなんだけれど……。 なんだか心が乾く。 それにポストに投函される手紙やわたしの前に現れるあの黒コーデの女性が不気味だ。 夢の中でもそんなことを考えていると、子守り歌が聴こえてきた。 後半は脅かされる夢だった。 『ねんねころりよおころりよ♪ ぼうやは良い子だねんねしな』 あの公衆電話から流れてきた子守り歌と同じだった。 『ぼうやのおもりはどこへ行った あの山こえて♪』 夢の中まで子守り歌だなんて……。やめて! その子守り歌をわたしに聴かせないで。 『里へ行った♪』 だから、子守り歌なんて聴きたくないんだってば。夢の中でわたしは叫んだ。 ねえ、お願いだから聴かせないで。 どうして、わたしを苦しめるの?
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