もう一つのプロローグ

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俺は森口さやの様子を柱の影からこっそり覗いた。俺の自慢のホットドッグにかぶりつきながら横目で隣の席の二人組のお客様をちらりと見ているようだ。 「あいつめちゃくちゃ頭にくるんだよ」 「どうしたの?」 「うん、それがね! 聞いてよ。あの女、わたしが派遣社員だからって馬鹿にしているんだよ。なんかムカつくから地獄に落ちてほしいよ」 お客様はぷんすかとお怒りのようだ。これは、俺の獲物かもしれない。いや、失礼しました。俺のお客様にしたいです。なんて心の中でブツブツ言っている場合ではない。 森口さやもどうやらこのお客様(獲物)に聞き耳を立てているようだ。俺の店に来てお客様(獲物)を横取りしようなんて五十年早いぜ。いや、百年早いではないか。 俺は森口さやをこのカフェに導いたことを後悔した。なんてことをしてしまったのだと俺は地団駄を踏んだ。 森口さやの頬は希望に満ち溢れニヤニヤしているように見えた。 しかも俺に負けず劣らず美人なことにイライラが止まらない。
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