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森城氷太はさっと視線を逸らしたかと思うとこちらに向かって歩いてきた。
「さやさん、オープン記念に特別サービスがありまして運んできたんですよ」
見るとお盆に可愛らしいクッキーが載せられていた。
「あら、氷太さん、それはありがとうございます」
わたしはにっこり微笑みを浮かべた。
「さやさん、どうぞ召し上がってください」
森城氷太は整った顔立ちに穏やかな笑顔を浮かべながらわたしの目の前に猫の顔のとても可愛らしいクッキーを置いた。
あら、優しいじゃないのと思ったけれど……。
しかし、この森城氷太の穏やかな笑顔の裏に隠された心理を感じるのだった。そう、わたしと似た匂いがするのだ。
まさか、それって……。わたしは森城氷太の顔を観察するようにじっと見てしまった。
やはりぷんぷん匂う。
「さやさん、僕の顔に何かついていますか?」
森城氷太は不思議そうに首を傾げた。
「……いえ何もついてません。ふふっ」
そうよ、その白くて透明感のある肌にはシミ一つないわよ。だけど、匂うのだった。わたしと似た匂いがするのよ。
これは、獲物を狙っている匂いに間違いない。この森城氷太もお客様(獲物)を探しているのだろうか?
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