諦めたのは僕だけだった

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 君が僕の人生からいなくなって、ずいぶん時間が経った。  あれから僕はしばらくの間、君への罪悪感に苦しみ続けた。  君からの手紙も形式的に最初の二、三通は返した。  けれど君から手紙がこなくなって、その間に僕の住所も変わった。  年齢を重ねていく内に、罪悪感と一緒に君との思い出も色褪せていった。  それは残酷な事だったけど、僕が生きていくためには必要な事だったんだ。  大学生になった頃には、もうほとんど君への罪悪感は無くなっていた。  色褪せて擦り切れた君との思い出はまだ僕の中にあった、けれどそれが僕を苦しめる事はもう無い。  君は僕の中でちゃんと過去になってくれた。 「頼む、明日の合コン来てくれよ。人数合わねえと話が流れちまうんだ」  ある日ぼくは、友人の一人から合コンの話を切り出された。  どうやら来るはずだった人間が、一人来られなくなったらしい。  僕は常々そういった話は断っていたが、友人がどうしてもと頭を下げるので仕方なく行くことにした。    友人の話によれば、相手は別の大学の子たちらしい。  僕の中にその子たちと上手い事やろうとか、そういった感情は無かった。  けれどもなぜだろうか、何かが始まるような気がしてならなかった。
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