関係。

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関係。

ドライアドの薬師も、眠ってしまっているということだった。 チャビの「回復」だと、さらに眠ってしまうしな……。 仕方がないので、魔王サマとブエルは放置して、〈傷痕〉の話を聞くことにした。 リリスの話によれば、〈傷痕〉は魔王領エメラルドと鬼族の住む真珠の里の間にあるらしい。 結界のようなものがあるらしく、何度も同じところをぐるぐると回り、なかなかたどり着けなかったという話だ。 最終的には、リリスと同行した獣人族の勘に頼ったとのことだった。 「結界ということは……」 ヴラドが眉をひそめる。 「はい。鬼族のものが関わっていると思われます」 鬼族は結界が得意なのか。 そういや、酒天童子が封印の札を持っていたな。 その酒天童子は、今自分の国に帰っている。 鬼族の中にも、フードをかぶった連中と通じているやつがいないか確認しに行ったのだが。 ほぼ確定か……。 「どうする? 酒天童子を待つ?」 「いえ」 ヴラドは首を振った。 「……あの男のようにあきらかな裏切り行為ならともかく、結界を張っただけなら、通じているものを見つけるのは難しいでしょう」 結局、魔王サマとブエルが目を覚ましたら、〈傷痕〉へ向かうことにした。 「……あのさ、言いたくないなら答えなくてもいいけど」 私の言葉に、ヴラドとリリスは首をかしげた。 「なんでしょう?」 「この世界って、数百年前に魔王サマが統一したんだよね? ほかの国との関係って、どういう感じなの?」 私が見た限りでは、魔王サマと側近であるヴラドやジークフリート達は仲がよさそうに思えた。 だが、あの犯人の男のように魔族の中にも不満を持つものはいた。 ならば、魔王サマに従う形になったほかの国からは不満は出なかったのだろうか。 「私達小人族は感謝しております」 リリスがにっこりと笑う。 「いくら小細工を弄しようとも、ほかの国と比べれば戦闘能力は劣りますし」 あのまま争いが続いていれば、小人族は滅ぶか、他国の属国になっていたかのどちらかだっただろう、とリリスは言った。 「鬼族は、最初から魔王サマに協力的でしたね」 なるほど。 竜人族は、確か百年ほど前にこちらに来たという話だったから、争いには関係ないしな。 国同士の仲は良好だが、一部に不満分子がいるというところか。 まぁ、そういうことなら。 遠慮はいらないということだよな……?
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