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本能の塊。
私の説明を聞き、リリスはなるほどと頷いた。
「道が正しいと信じていれば、迷わないということなのですね」
「我ら獣人は、野生の本能を強く残した種族だからか」
ブエルも納得した様子だった。
「それで、はぐれたものはどうなった?」
魔王サマがリリスにたずねる。
「大丈夫です。みな、森の外に戻されただけですから」
また森の中に入っても、ぐるぐると同じところを歩いているような感覚になり、不安になって何回も戻されたということだったらしい。
なら、ヴラドは無事だな。
先を急ごう。
その瞬間だった。
キャットハウスから、よつばが飛び出してきた。
「にあん! にあん!」
目の色が変わっている。
こ、これは、まさか……。
「にあん!!」
ヤバい!
よつばが前足をちょいちょいと動かした。
「解除」のスキルを使う時の仕草だ。
今まで見えていた景色が、急に切り替わったような感覚におちいる。
鳥のさえずりや、羽ばたく音が聞こえてきた。
「あー、もう!」
やつらにバレないように近づく予定だったのに!
「りゅうたろう、コハク。大きくなって!」
私の肩からひらりと飛び降りたりゅうたろうが、虎ほどの大きさに姿を変えた。
コハクも、柴犬サイズから牛くらいの大きさに変わる。
森の中では、それ以上大きくなっては動きづらいと判断したようだ。
「どうした?」
魔王サマが、ブエルとリリスをかばうような仕草をしながら聞いてきた。
「よつばが『解除』したので、多分やつらにバレました!」
ほかの猫達も、キャットハウスから呼び出す。
「にあん!」
よつばはひどく興奮した様子で、走り出してしまった。
「みんな、追うよ!」
よつばを追って走り出す。
「何故、急に……?」
落ちないようにと、走るブエルのたてがみにつかまりながら、リリスが疑問を口にする。
「やつらを見つけたからか?」
いや、やつらのことはどうでもいい。
しかし、このタイミングで最悪なことをしやがったな、おい。
「人魚がいるんだよ!」
「人魚? 捕まっているのか?」
おそらく、またサンプルを自分達の世界に運び込もうとしているのだろう。
だが、問題はそこではない。
なんとしても、よつばを止めなくては。
「よつば! 待ちなさい!」
耳がぴくっと動いたから、私の声は聞こえているようだ。
しかし、止まる気配はない。
あいつ、無視する気だな。
「だから、人魚は食べないと言っているでしょうが!!」
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