フードをかぶった連中。

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フードをかぶった連中。

よつばのあとを追い、森を抜けた。 ひらけた場所に出ると、檻や水槽を運んでいる最中らしいフードをかぶった連中の姿が見えた。 やつらの後ろでは、空間に大きな亀裂が入っていた。 昔、テレビで見た雪山のクレパスのように、何の前触れもなく世界がぱっくりと裂けていたのだ。 「……?」 だが、妙に痛々しいような感じがする。 「以前より広がっています」 ブエルの肩に乗ったリリスが言うと、魔王サマは苦々しげに呟いた。 「無理に広げたな……」 んー? つまり、一瞬しか繋がらないはずの世界の傷を維持するために、やつらがこじ開けたということか? フードをかぶった連中が、こちらを見て騒ぎ始めた。 今頃、気づいたのか。 これなら、とっととよつばに「解除」させておけば……。 って、忘れてた! 慌ててよつばの姿を確認すると、すでに人魚の水槽の近くまでせまっていた。 「よつば!」 私の声を聞き、よつばはびくっとして振り向いた。 「よーつーばーちゃあん?」 いつもと違う呼び方に、さすがにマズいと思ったらしく、よつばは慌てて私の元に走ってきた。 すりすりと体を私の足にこすりつけ、上目遣いで見上げる。 「にあん……?」 可愛い子ぶってもダメです。 そこへ、フードをかぶった連中が近寄ってきた。 「お前達ハなンダ!?」 「ナゼ、コこに!?」 うるさいな。今、いろいろ取り込み中なんだよ。 ……ん? やつらは、手に銃のような物を持っていた。 こちらの世界は魔法があるせいか、武器といえば剣や弓が主流だ。 やはり、違う世界の人間なのか。 ずいぶんと近づいてきてから、やつらは私達に向けて銃をかまえた。 ……つまり、この距離でしか撃てない。または、当たらないということか。 弓矢よりも、ずいぶんと飛距離が短いようだ。 竜人族や鬼族へは手出しできなかったことと合わせて考えると、威力も大したことはないのだろう。 と、いうことはだ。 銃を持っていたところで、うちの猫達の敵ではないということだな……? ましてや、うちの猫達はみんな物理耐性持ちだ。 くぅにいたっては、物理、魔法とも無効のラスボス仕様だ。 ちらり、とおこんが私の顔を見た。 りゅうたろうが、ひらりとコハクの背に飛び乗る。 よし、ヤル気ですね。 こほん、と咳をして私は叫んだ。 「行ったれやぁぁぁぁ!」 私の合図で、猫達が一斉にフードをかぶった連中へと飛びかかった。
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