滅びゆく世界。

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滅びゆく世界。

心配そうに見守る魔王サマ達に手を振って、私達は〈傷痕〉をくぐり抜けた。 転移魔方陣を使った時のように妙な感覚に襲われることもなく、拍子抜けするほどあっさりと通り抜けることができた。 猫神であるミーコさんは、いろいろな世界を気まぐれに渡り歩くらしいから、その魂の一部を分けてもらった私にもその影響があるのかもしれない。 赤みを帯びた空には、大中小の3つの真っ白な太陽が浮かんでいる。 そして、見渡す限りの赤茶けた砂漠が広がっている。 無風だ。 異常なほどに、何の気配もしない。 ひどく寒い。 ……もしかして、この世界は死にかけているのか? 私は〈傷痕〉を振り返って、ため息をついた。 向こう側に見える景色は、青空が広がり、太陽に明るく照らされている。 あふれるばかりの緑と、穏やかな風。 「……」 〈世界の傷〉が、一瞬2つの世界を繋げた。 そこに見えたのは、希望に満ちあふれた世界。 死にかけている世界の住人が、何を思ったのか。 私には分からない。 だが。 今、私のすることは、さらわれたエリザベートや獣人達を救い出すことだ。 「せり、歩ける?」 「にゃあ!」 猫達は砂の上をすんなりと歩いている。 そういえば、猫のトイレ砂に似ている……。 って、ああ、やっぱり! 「掘るな! ブツを埋めるな!」 キャットハウスに、全自動の猫トイレがあるだろうが! 私の制止もむなしく、異世界の砂漠は広大な猫トイレと化してしまった。 私はあきらめて、その場にしゃがみこんだ。 これ、片付けた方がいいのか……? 「……ん?」 遠くに、なにやら影が見える。 動いているようには思えないので、生き物ではないだろう。 「キング、あそこまで『空間転移』」 キングがぱちりと目を閉じると、微妙な浮遊感と共に私達は移動した。 「これは……」 見えていた影は、朽ちかけた建物だった。 無機質なビルのような残骸が、なかば砂に埋もれている。 よく見れば、周囲には車らしきものや、オブジェのようなものもあった。 猫達が、ふんふんと匂いをかいで回っている。 「……昔見た映画みたいだね」 この世界は、魔王サマ達の世界より文明が進んでいたのだろう。 銃を持っていたのも、そのせいか。 だが。 この世界は、多分死にかけている。 異物を排除する力も、もう残っていないのかもしれない。 「コハク、出てきていいよ」 念のため、キャットハウスに入ってもらっていたコハクを呼び出す。 本来の大きさに戻ったコハクが、赤みを帯びた空に舞い上がる。 ばっさばっさと翼を羽ばたかせ、静まり返っていた砂漠に風が吹いた。 「行こう、みんな」
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