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今さらだけど。
あっという間に、猫達が大暴れをしている場所についた。
さすが、ドラゴン。
死ぬかと思ったけどな……。
だが、コハクは地上に降りようとしない。
ん? あんた、まさか私に飛び降りろと?
死ぬだろ!
りゅうたろうと違って、私はひらりと飛び降りたりはできません!
そういや、猫ってよくもまぁ、自分の何倍もの高さに飛び乗ったり降りたりできるできるよな。
あのサイズだからかわいいと思えるけど、もっと大きかったら……。
いや、りゅうたろうは最大でお城サイズになれるんだった。
りゅうたろうはめったにキレたりしないから気づかなかったけど、魔王候補の伏兵がまだいたか……。
いや、うん。現実逃避をしている場合ではない。
「コハク、降りて! 下に降りて!」
「ピィー?」
ピィー? じゃなくて!
降ろして!
私の言葉を理解したらしく、コハクはゆっくりと下降した。
大丈夫そうだろうという高さまで降りたところで、私はコハクの足から手を離した。
やはり、りゅうたろうのように華麗に飛び降りはできなかったが、下が砂地だったので、なんとか大丈夫だった。
すでにコトは終わりかけていた。
死屍累々とでも言おうか。
フードをかぶった連中と同族と思われる人間達が、うめきながら地面に倒れていた。
めり込んでいるやつもいたが、とりあえず生きてはいるようだ。
当たり前のことだが、身を隠す必要がないので誰もフードをかぶっていない。
白っぽい黄色の髪をしており、瞳の色も黄色だった。
それ以外は、ほぼ人間と同じ姿をしている。
だが、裏世界では人間は珍しい。
おそらく、それもあってフードをかぶっていたのだろう。
「……」
それと、全員が小型の酸素ボンベのようなものを口にくわえていた。
私や猫達はなんともないが、この世界の住人には必要なのだろうか。
複雑なものだ。
裏世界では、この連中も酸素ボンベなしで活動していた。
異世界の方が、身体に合っていたということなのだろう。
「……?」
今さらだけど、なんでこいつらは魔王サマを猫にしたのだ?
いや、呪いをかけるのは理解できる。
こいつらにとっても、ヴラドを裏切った吸血族の男にとっても、魔王サマの存在は邪魔だっただろうからな。
今回は、魔王サマの魔力が高すぎて中途半端だったが、最初のもくろみどおり猫になっていたのなら。
魔王サマは行方不明ということになっていたはずだ。
〈だった数百年前〉に統一されたばかりの国は、互いに疑心暗鬼になり再び争いが起きてもおかしくはなかった。
「でも、なんで猫……?」
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