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どちら様?
仕草だけは華麗だが、がっつり力業でエリザベートがほかの獣人達が閉じ込められた檻をこじ開けていく。
話を聞くと、がちの殴りあいをした場合、エリザベートに勝てるものは吸血族の中にはいないらしい。
しかも、まだ成人していないので、もっとパワーが増すだろうということだった。
「大人になったら武者修行の旅に出たいのですが、お兄様に反対されていて」
そんな話をしながら、エリザベートはぐにょんと檻の棒をねじ曲げていく。
「本当に過保護なんですから……」
そう言って、エリザベートはため息をついた。
いや、それ、君がナニかしでかす方を心配してるのでは……?
福助やおこんが、目をきらきらさせながらエリザベートを見ている。
キングが、ちょんちょんと檻の棒に触れていた。
あー、うん。あんた達でも、コレはムリだからね?
いくらチート持ちとはいえ、さすがに力業すぎる。
そう思っていると、くぅがしっぽをゆらゆらとさせながら檻に近づいた。
……頼む、くぅ。これ以上はやめてくれ。
私の神経がもたない……。
だが、やはり、私の願いはむなしかった。
がきんっ、と牙で檻の棒を噛みきってしまったのだ。
「……なんで?」
いや、ほかの猫達も「ソレか」みたいな顔しない!
魚の小骨を噛み砕くように、猫達が檻の棒を噛みちぎっていく。
だから、なんでだよ!
この世界の鉄は、発泡スチロールかなんかでできているのか!?
エリザベートが棒を飴細工のようにねじ曲げる。
「これ、多分魔力が通っているからですわ」
「魔力?」
「確かに私はパワータイプですけど、簡単すぎますもの」
おそらく、棒に通っている魔力を上回る力を持つものなら、簡単に曲げたり折ったりできるのだろう、とエリザベートは言った。
なるほど。
それなら、うちの猫達が噛みちぎれるのは当たり前か。
「……」
んー? この世界に魔力?
滅びかけているとはいえ、見た限り科学が発展した世界のように見えたが。
……まだ誰か、裏切り者がいるということか?
「にゃお!」
考え込んでいると、チャビが私の足元で鳴いた。
どうやら、この部屋にいる獣人達の救出が終わったようだ。
どうする? みたいな顔をしてチャビは私を見上げている。
ああ、そうか。
チャビが「回復」すると寝てしまうからな。
「とりあえず、エアラとエリザベートは部屋から出てもらって……」
そう言いながらエアラを振り返った私は固まってしまった。
白っぽい黄色の髪はきらきらと輝く黄金色に変わり、かさかさだった肌もみずみずしく潤っている。
棒のように痩せほそっていた手足は、ふっくらとしていた。
私とエリザベートは、一瞬顔を見合わせた。
「……どちら様?」
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