お前達の相手は別にいる。

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お前達の相手は別にいる。

見れば、部屋の中にいたのは人魚だけではなかった。 獣人達は檻の中で鎖につながれ、衣服を着せられていなかった。 毛の一部を剃られているものもいるようだ。 小人族は小さな虫かごのようなものに入れられ、なぜか強い光を当てられている。 魔族はぐったりとした様子で、注射器のようなもので血を抜かれている。 そして。 白っぽい黄色の髪を持つ人達もまた、部屋のすみで鎖につながれてうなだれている。 みんなエアラと同じように丈の短い衣服を着ていて、手足は棒のように痩せほそっていた。 自分たちと同じ世界の人間すら、こいつらにはモルモットのように見えているのか。 おそらく、エアラも近いうちにこちらの部屋に移される予定だったのではないだろうか。 「……」 私は気持ちを落ち着かせるために、小さく息を吐いた。 きっと顔をあげ、猫達に指示を出す。 「よつば、『解除』」 よつばが前足をちょいちょいと動かした。 がしゃん、と音を立ててみんなをつないでいた鎖が床に落ち、檻の扉が開く。 「おこん、『創生魔法』。キレイな海水の入った水槽」 「にゃん!」 目の前に大きな水槽が現れた。 たぷんっ、と水槽の中の水が揺れる。 「人魚を水槽に移す。りゅうたろう、手伝って」 「……」 大きくなったりゅうたろうの背中に人魚を乗せる。 濡れた感触が嫌だったらしく、背中がうにょんとなったが、水槽に移すまで我慢してくれた。 「せり、みんなをこっちに連れてきて」 「にゃあ!」 せりがやつらの足元をすり抜けながら、つかまっていた獣人達の元へ急ぐ。 ブエル達のような猫科の獣人に限られるが、猫達となんとなく意志疎通ができることは魔王サマのお城に滞在している時に分かっている。 「な○◎、おま▽◆□は!?」 「つか◎△■!」 やつらが大声で叫ぶ。 だが、ほぼ何を言っているのかは聞き取れない。 銃のようなものを取り出し、こちらにむける。 「福助、『風の盾』!」 「にゃ!」 福助が張り切って鳴いた。 張り切りすぎたのか、福助の作り出した「風の盾」はやつらの攻撃を防ぐどころか、本体をはじき飛ばしてしまった。 「キング、この人達を連れてエリザベート達のいた部屋まで『空間転移』!」 「にゃう!」 「チャビも一緒に行って『回復』して」 「にゃお」 「◎▽◇△■□!」 「▲○◎□▽◇!!」 やつらが怒り狂った様子で近づいてくる。 もはや、何を言っているのか予想することすらできない。 だが、まぁ、そんなことはどうでもいい。 ゆらり、と足元から炎をたちのぼらせたくぅが一歩前に踏み出した。 身体中の毛を逆立て、牙をむき出した顔は猛獣を通り越して、まるでこの世の生き物ではないようだった。 「うなぁぁぁぁおぅぅぅぅぅ!」 くぅの雄叫びが、滅びかけたこの世界に響く。 ……とりあえず、巻き込まれない位置まで移動しておくか。
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