やり過ぎでは……?

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やり過ぎでは……?

以前、つかまりそうになったことがあるくぅは、鎖や首輪といった拘束具の類いを見ると問答無用でぶちギレるのだ。 「うなぁぁぁおぅぅぅぅぅ!!」 くぅの「威嚇」で妙に息苦しい。 「□◆○っ!」 「○▼▲魔王▽!」 ん? 魔王だけ聞き取れたぞ。 ああ、なるほど。こいつらはまだくぅのことを魔王サマと間違えているのか。 ……多分、本当に魔王サマだった方がマシだったと思うがな。 やつらはガタガタと震えながら、必死な様子でくぅに銃口を向けた。 だが、足元から炎をたちのぼせながら、平然とくぅは近づいていく。 物理無効だしなぁ……。 案の定、銃はなんの役にもたたなかった。 らんらんと目を光らせながら、くぅはくわっと口を大きく開けた。 「ぎゃああ!」 やつらが悲鳴をあげる。 そうか、悲鳴はどの世界でも同じように聞こえるんだな。 多少の現実逃避を交えながら、私はそんなことを思っていた。 それと、猫達がやたらとここの連中を敵視する理由が分かった。 匂いだ。 この部屋に入った時に、病院のような匂いがした。 私は気づかなかったが、エアラ以外の人間にはその匂いが染み付いていたのだろう。 こっちに来てから病院なんて行っていないのに、いつまでも執念深いな……。 がぶり、とくぅが一人の足に牙を突き立てた。 「ぎゃあああああああ!!」 噛まれたやつが、悲鳴をあげて気を失った。 痛いだろうけど、猫に噛まれたくらいで気を失うなよ。 ん? いや……。 この世界の人間は本来魔力を糧に生きている。 魔力が通った鉄の棒は、含まれているものより高い魔力を持つものなら破壊するのも簡単だ。 実際、猫達には魚の小骨程度の固さだったようで、あっさりと鉄の棒を噛みちぎっていた。 と、いうことは? 人間の足って、鉄の棒より弱いよな……。 「……」 よし、戻ろう! チャビが一緒だから大丈夫だとは思うけど、エアラ達のことも心配だし。 ぶちギレているくぅは止めようがないし。 うん、戻ろう。 決して、見ないふりをしようとしているわけではないぞ! 私はりゅうたろう達を連れて部屋を出た。 背後からは、断末魔の叫びが絶え間なく聞こえてくる。 「大丈夫だよね? いくらぶちギレているくぅでも、そこまではしないよね?」 私の言葉に、猫達が不自然に目をそらす。 なぜか毛繕いをはじめたり、壁で爪をといでいる。 何かをごまかす時に、猫がよくやる仕草だ。 「…………」 まぁ、最悪でも死んでさえいなければチャビの「回復」でどうにかなるさ! ……多分。
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