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不適合。
響きわたる断末魔を無視して、私達はエリザベート達のいる部屋へと戻った。
チャビが「回復」したので、もがれた羽も剃られた毛も、みんな元通りになっていた。
人魚はあいかわらず水面にぷかりと浮いていたが、よつばが熱心に水槽をのぞき込んでいるから、ちゃんと回復しているのだろう。
ただし、エリザベートを含め、みんなぐっすりと眠り込んでしまっている。
チャビの「回復」は万能だが、ごろごろとのどを鳴らす音を聞いているうちに眠ってしまうからだ。
私や猫達、それにコハクは免疫があるから平気なのだが。
ただし。
今回は、どういうわけかエアラを含めた数人が目を覚ましていた。
奥の部屋で鎖につながれていた、この世界の人間達だ。
んー? この世界の人間には、状態異常系は効果がないのか?
いや、よつばの「魅力」やくぅの「威圧」は効いていたみたいだしな。
まぁ、くぅのはスキル関係なく、シンプルに恐怖を覚えただけかもしれないが……。
「こレ、みんなも食べテいい?」
エアラがまだ残っていたオレンジ色の魔作物を私に見せながらたずねてきた。
「みんな、お腹すいてイるって……」
ああ、そうだろうな。
みんな、ガリガリに痩せほそっているからな。
「うん、いいよ。まだあるから、好きなだけ食べていいし」
私は無限収納から魔作物を取り出すと、みんなに配った。
怯えたように私の顔をうかがいならそれを受け取ったが、我慢できなかったのだろう、みんながつがつとむさぼるようにして食べた。
「……」
ん? もしかして、お腹がすいて目を覚ましたのか?
いや……。
やつらには効果があって、エアラ達にはあまり効いていないということは。
はっきりとしたことは分からないが、この世界の住人達は支配する側とされる側に分かれているようだった。
エアラ達は「される側」の人間だったが。
本来、この世界の人間は魔力を糧に生きている。
だが、本来の姿とは真逆の科学を発展させた結果、この世界は滅びかけている。
おそらく、エアラ達は科学が発展した世界になじめなかったために、「支配される側」になってしまったのだ。
「……」
つまり、だ。
エアラ達は、ほかの人間より多く魔力を必要としている。
そして、チャビの「回復」による副作用も影響が少ない。
つまり、つまり、だ。
「ありガトウ」
エアラとは違う声に振り向くと、みんながにこにこしながら私を見ていた。
白っぽい黄色の髪は輝くような金髪に変わり、痩せほそっていた身体はふっくらとして、肌は潤い、目には生気が宿っている。
おそらく、うちの猫達ほどではなくても、エアラやこの人達は尋常でなく高い魔力を持っているのだ。
「……」
今はいいが、私や猫達がいなくなれば、また元に戻ってしまうだろう。
いや、魔力を得られなければ確実にそうなるはずだ。
正直、そこまでする義理はないかもしれないが。
んー、仕方ない。
世界をひっくり返すとしますか。
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