スローライフ……?

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スローライフ……?

んー、土が固くなっているな……。 「くぅ、『土魔法』」 「にゃ……お」 あくびしながら、片手間にやるなよ。 ぼこぼこと土が隆起する。 これで、どうにかなりそうだ。 私は無限収納から鍬や鋤などの農具を取り出した。 これもじょうろと同じように、将来畑を作ってスローライフを送るために気にいったデザインのものをこつこつと買いためていたものだ。 「おこん、『創成魔法』。これと同じやつをお願い」 「……にゃん!」 一瞬首をかしげたが、おこんは大量の鍬を「創成魔法」で出してくれた。 どうやら、鋤はお気に召さなかったようだ。 猫の好みは分からん。 振り返ると、連中がびくりと身をすくませた。 どうやら、私も「ヤバいやつ」認定されたらしい。 あれは、大鎌がスゴいのであって……、まぁ、いいか。 これなら、おとなしく従うだろうしな。 私は鍬を連中に手渡した。 しげしげと鍬を眺め、それから連中は首をかしげた。 「耕せ」 はるか遠くまでむき出しになった地面を指差しながら、私はそう言った。 「●◇★▽!」 「■◎◇▼◎△!!」 「やかましい! 四の五の言わずに黙って働け!」 私の隣で、大きくなったりゅうたろうが牙をむき出してみせた。 私も軽く大鎌を振る。 紅い刃から炎が舞い上がる。 それを見て、連中はしぶしぶ土を耕し始めた。 腰が入っとらん。 もっと気合い入れて耕せやぁぁ! ぎゃんぎゃんと騒ぐ私に閉口したのか、次第に真面目に耕すようになった。 中には、憑き物が落ちたかのように晴れ晴れとした様子で熱心に耕すものも出てきた。 うむ。それでいい。 「私もやる」 そう言いながら、エアラが鍬を持とうとするのを止める。 「エアラはこっち」 赤いブリキのじょうろを見せた。 これは、魔力を注げば半永久的に水が出てくる魔道具なのだ。 注いだ魔力の量によっては、作物の生育が早くなったりもする。 私の説明をうんうんと頷きながら、エアラは真剣に聞いていた。 「どウやって、魔力を注ぐの?」 「……」 どうやって、でしょうね……。 猫達は魔導の船を動かしたり、じょうろに魔力を注いだりしているが、魔力の方はまるっきりの私には理屈が分からない。 そもそも猫なので、多分理屈でやっているわけではないだろうしな……。 「猫達がやるのを見て覚えて、としか……」 「わ、分カった……?」 せりがじょうろに体をこすりつけたり、よつばがぽすぽすと前足で叩くのをエアラは一生懸命に見ていた。 時折、自分もじょうろにほおずりしたり、ぺしぺしと叩いてみたりしている。 うん。なんか、ごめん……。 徐々に耕されていく大地を見ながら、私はふぅと息をついた。 魔力をたっぷりと吸った作物が実れば、この世界は次第に本来の姿に戻っていくだろう。 それを食べ、身体が魔力に充たされれば魔法を使うものも現れるはずだ。 滅びかけた世界は再生していく。 その後のことは、この世界の住人次第だ。 しかし。 私の思っていた「異世界でスローライフ」とは、多分ナニか違うよな……。
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