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神様?
よし、耕し終わったな。
次は……。
「もうすぐ夜ダよ」
「え? まだ明るいよ?」
エアラの言葉に、私は思わず空を見上げた。
……ん?
来た時には、大中小の三つの太陽が空に浮かんでいたはずだが、今は一番大きい太陽しか見えない。
「太陽が一個にナったら、夜」
「かわりばんこに、お休みスるの」との話だったから、夜になると三つの太陽のうち一つだけが残るのだろう。
今は大きい太陽だから明るいが、小さい太陽の時は夜になると薄暗くはなるらしい。
どうやら、この世界では完全に日が沈むということはないようだ。
「それじゃ、いったん休みにするか」
私の言葉を聞き、耕していた連中は鍬を放り出して地面に座り込んだ。
こら! 農具はもっと大事に扱え!
しかし、こうも違うものか。
水と魔作物の配給を受け取るために並んだ連中を見て、私は内心で驚いていた。
昼にも配給したが、それを食べた連中は夜になるまで休みなく働いた。
外に出る時は小型の酸素ボンベのようなものを口にくわえていたはずだが、それすら必要としなくなっていた。
エアラ達のように劇的なほどの外見の変化はなかったが、やはり、この世界の住人は魔力を得ると力を発揮するようだ。
「今日は、これで解散」
首をかしげる連中に、私は魔作物の苗を見せた。
これも、将来スローライフを送るために集めていたものの一つだったが仕方ない。
「明日は、これを植える」
「◎レ、なニ?」
言葉も前より通じるようになってきたようだ。
「今、あんた達が食べたやつの苗だよ」
私の言葉を聞き、エアラもほかの連中も顔を輝かせた。
おうともさ。
見渡す限りの緑の大地にしてやろうじゃないか。
とはいえ、苗の数が足りない。
それに、魔作物以外のものも欲しいところだ。
んー、エリザベートや獣人達もそろそろ目が覚めただろうし、一度向こうに帰るか。
明日にそなえてしっかりと休むように言い含めると、エリザベート達を迎えに戻った。
私達がいない間は、エアラのように魔作物を食べて本来の姿になった人達がしっかりと様子を見てくれていたようだ。
現在の状況を簡単に説明すると、エリザベートはなんともいえない表情になった。
「あなた達、この世界の神様にでもなろうとしているのかしら……?」
は? 神様?
なんじゃ、そりゃ。
……いや、でも冷静に考えると。
悪いことをしていた連中に、圧倒的な力を持つものがどこからともなく現れ鉄槌をくだし。
虐げられていたもの達を解放し。
食べ物を与え、荒れ果てていた大地を緑に変える。
あー、うん。創生神話だな、これ。
どっちかというと、魔王サイドのはずなのだが。
猫達を見ると、あくびをしたり、後ろ足で頭をかいていたりする。
神様とか面倒だよなぁ……。
猫だし。
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