華高祭

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 彼らの楽曲を盛り上げるためにステージ横に設置されたスクリーンにプロジェクターであの映像が映し出される。 〈夜空に浮かぶ半月〉 〈月明かりにきらめく川面〉 〈土堤の途中で自転車を横倒しにし、服を脱ぎ捨て、川へと向かう男〉 〈顎からへそまでのほどよく筋肉がついた男の上半身〉 〈月〉 〈川面〉 〈川に向かって歩く裸の男の後ろ姿〉  この男がオレだと誰も気づかないはずだとわかっていても、恥ずかしい。搔き鳴らすギター、フットベースのリズムに合わせたかのように歩く裸の尻肉が動く。ぼかされてはいるけれど全く見えないというわけではない。自分の頬が、耳が熱いのが触らなくてもわかる。 〈月〉 〈川面。水面を揺らして川の中から長い髪の女が現れる〉
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