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撮影日前日は動きだけを何度も彼らからレクチャーを受けた。そして翌日、日が落ちてから撮影が始まったのだった。オレの相手役は写真映像部のぽっちゃり体型の野中さんで、台本通りから始まり、少しずつ変化した形へと高橋さんに言われるがままに動き、撮られているうちに、オレは半裸から真っ裸にされていた。
あの日もひどく暑かった。昼の暑さを思えばずいぶんとマシにはなっていたが、さすがに野中さんやオレに疲れが見えてきた頃、月が翳り出した。高橋さんがそれを見上げ、「ラストテイクはボクがやる」と服を脱ぎ捨て川に入ったのだった。
川の中から彼の声が飛んできた。
「将宗、スタート! 歩け!」
映像だけが必要で、音がいらないのをいいことに大声で他の部員たちにも指図している。
ウイッグでロングヘアーになった高橋さんは川の中からゆっくりと現れ、少しだけ腰をくねらせるように一歩ずつ近づいてきた。野中さんとはかなり違う動きに固まっているオレの胸前にすっと入って抱きつき、胸を合せた。耳元で「へっぴり腰になるな」「ボクの腰を引き寄せろ」と次々と指示を出す。そして躊躇しているオレの耳元で言った。
「ラストテイクだって言っただろ。やらないと終わらない」
そのままの姿勢から爪立てて、オレの頬や顎にキスを仕掛けてきた。
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