出会い

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出会い

 県立の華山(かざん)高等学校に入学した時、高橋さんは三年生だった。一学年百五十人余りの生徒が通う男子校で、部活やクラブなどが一緒でなければ、普通なら二学年上の高橋さんと話すことなどはなかったのではないかと思う。  オレ、鈴木(すずき)将宗(まさむね)は小学校からの腐れ縁ともいえるアキと呼んでいる山口(やまぐち)秋海(あきと)に丸め込まれ、バスケットボール部に所属していた。ただ、オレは少し背が高いだけで、実は運動はイマイチで中学時代もほとんど試合に出たことがない。そのオレと違って、アキはオレより十センチ近く低いがバスケの才は別格だと思っている。現に中学では常にレギュラーメンバーだった。  バスケ部の活動にはたまに参加するだけで、図書室に入り浸っていることの方が多い、まあ、幽霊部員といったところである。特別本好きというわけではないけれど、少し古びた本の匂いや書架の間を抜けてくる風を感じながらうたた寝をするのが好きだったのだ。  オレが部活をサボって図書室にいることはアキは知っていて、部活が早く終われば呼びにくることも。幽霊部員ながらも、もしもの需要のため待機中との言い訳もほんの少しだけある。
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