出会い

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「ボクは高橋。君は?」 「鈴木です」 「下の名前は?」 「あの……」 「鈴木くんはいっぱいいそうだから」  確かにそうだ。クラス内にもう一人いる。 「将宗(まさむね)です。時代劇に出てきそうだとよく言われます。先生からは日本酒か? と言われたり……」  別に言わなくてもいいことが口から出てくる。 「いい名前だと思うよ。かっこよくて強そうだし、やさしそうでもある。じゃあ、ボクは将宗くんと呼んでいいかな」  この人とこの先接点があるかどうかもわからないけれど、イヤとも言えず、とりあえず頷いておいた。それで気が済んだのか、問題集を広げるとオレを気にする様子もなく集中しているように見えた。  高橋と名乗ったこの人は横顔がより整っていた。最近「顔面偏差値」という言葉をよく聞くが、男性アイドルの中でも上位にくるのではないかと思った。立ち上がった時の目線の高さからの推測では百七十センチに届くか届かないかといったところだろうか。起こされる前の形に戻ったオレはしばらく横顔を眺めていたが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。 「将宗くん、将宗くん、起きて」  肩をたたかれ、自分の名を呼ばれているのに、全てがやさし過ぎた。なかなか目覚めないオレに強めの言葉が刺さる。 「将宗、起きろ」
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