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「んっ?」
「将宗くんがあんまり起きないから、呼び捨てにしてしまったよ。ごめん。図書室を閉める時間だから起きないと。よっぽどこの場所が居心地がいいらしい。ぐっすりだったからね」
「すみません。起こしてもらっちゃって」
「それはいいから、早く。図書委員が困ってる」
オレは今日初めて会って話した高橋さんに手首を掴まれ、引かれるようにして図書室を出た。前を歩く彼からなのかはわからないが、少し甘さのある、爽やかな香りが漂ってきた。
「あの、高橋さん。手を……」
オレの遠慮がちの小さな声が届いたようで、掴まれていた手首が自由になった。
「あ、ごめん。じゃあ、また」
オレが彼に対してする挨拶が「さようなら」でも「バイバイ」でもない気がして、応えを探しているうちに廊下を曲がったらしく彼の姿はもうなかった。
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