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図書室で出会ってから三週間ほど経った頃のことである。その日はアキが呼びに来て部活に向かう廊下で、ふと、風とともにいつかの図書室から出た時に嗅いだ香りを感じたような気がした。その時、確かなものは何もないけれど、もしかしたら高橋さんに会えるのではないかと思った。
「アキ、悪い。用事を思い出した。今日は部活休むわ。オレがいてもいなくても、だろ。みんなには適当に頼む」
「またかよ。わかったよ。じゃあな」
細かく訊かないのがこいつのいいところではある。アキと別れてオレは図書室に向かった。図書室の中をぐるっと一回りし目だけ動かし高橋さんを捜したが、予感が外れたようで彼を見つけることは叶わなかった。そこで待つ選択もあったかもしれないが、いつもの暇を潰すだけの図書室滞在と明らかに目的が違う気がして、このまま帰ることにした。
校門を出ると駅までの歩道は男子高校生が連なっていた。オレは電車通学ではないけれど、駅の東口から入って中を横切り南口から出て家に戻る。
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