「サンタなんかいないけど」

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「サンタなんかいないけど」

一樹はなんだかんだと周りに言われていても、まともな感覚をしている。 だから、もちろん家族のことを想い考えられる頭も持っているので、いくら悪ぶって見せてはいても、給料の良さで夜のバイトや危険そいなバイトを選んだりはしない。 ちょうどクリスマス前で賑わっている商店街で、高校生が当たり前に雇ってもらえるような歩合制のバイトを見つけると、毎日決まった時間に真面目に通っているようだった。 それでクリスマス前に彼女のこと構えなくなったら本末転倒じゃん。 こうなるに決まってるじゃん。 …って気も、まあしなくもないんだけど。 でもまあ、そんなん女によるか。 自分に贈るプレゼントの為に、彼氏がせっせと精を出してバイトしてくれてる、と思ったらさ。 普通は他の男となんか、遊ぶ気おきないんじゃないの。 嬉しい、幸せ、って。 そう感じるもんなんじゃないの。 もちろん、そうじゃない女だっているのが、この世の中ってやつだ。 で、一樹の彼女ってのは、そうじゃない方の女だった、ってだけの話。 「一樹は、気づいてないのかな?」 「あんまり会えなくても、夜に電話くらいはするっしょ」 「実は、もう別れてたりして?」 仲間内でこそこそと囁かれる、そのどの言葉にも俺は頷けないし、何も言えない。 だって、一樹と彼女が別れた、と言う話はきいていないし、こんなことになっているだなんて夢にも思っていないのではないだろうか。 そして、ああ言う女なのだから、夜は当然一樹と仲良くおやすみ前の電話でもしているのだろうと考えられた。
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