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「目、開けていいよ。碧」  いいと言われたのと、僕が目を開けたのはたぶん同時だった。  右手は耀くんに取られたまま。    その、僕の右手の薬指に、指輪が嵌められていた。 「あ…」  胸がきゅんとして、どきんと鼓動が大きく鳴った。 「…ようくん…ゆびわ…」 「うん。思った通り、すごくよく似合う。碧、手綺麗だよね。指が細くて爪が長い」  金色と銀色のバイカラーの細身の指輪。 「どう?碧」  僕の手を取ったまま、耀くんが覗き込むように僕に訊く。僕は、うん、うんって頷いて応えた。  じわじわと涙が滲んでくる。 「あ、ありがと…、ようくん…。うれ…うれし…」 「碧は泣き虫でほんとに可愛いなぁ。なんでそんな可愛いの?」  僕の肩を抱いて、長い指で僕の涙を拭いながら耀くんが言う。 「ごめんな?語彙が死んでて。も、碧見てると可愛いくらいしか出てこない」  そう言って耀くんがまた僕の頭を撫でてくれた。  だいすき 「ちなみにね、指輪、ペアにしたくて俺の分もあるんだけど」  ペアリング…!  僕は弾かれたように耀くんを見た。 「え、あ…、じゃあそれ僕が…」  耀くんに…  見上げた耀くんは、涙で滲んだ視界でもすごく格好よくて、笑顔が綺麗で眩しい。 「着けてくれる?」  うん、って頷いたら、耀くんが僕の左の手のひらにもう一つの指輪をのせた。  艶消しの金と銀の、シンプルなデザインのリング。  それを、震える手で耀くんの右手の薬指に嵌めていく。  独占と、束縛と、幸福の契約  勝手にぽろぽろと涙が流れ落ちてきて、でも僕は笑っていた。  うれしくて、うれしくて、うれしくてたまらない。  自分の指と耀くんの指に同じ指輪が光ってる。  耀くんに指輪を嵌めて、その長い指を握ったまま離せない。  僕の耀くん…  耀くんが僕の手の上に手を重ねた。 「一瞬ね、左の薬指に嵌めちゃおっかなって思ったけど、それはまた今度、ね」 「…こんど…?」  耀くんが僕の涙を拭いながら「綺麗だなぁ」って言った。 「次はダイヤが付いたのプレゼントするよ。だから…」  これから先もずっと、碧は俺のものだからね、と念を押すように言われた。  僕はまた、うん、て頷いた。うん、うん、って頷いて、鼻を啜って耀くんを見つめる。 「…よ、ようくんも、ずっと、ずぅっと、ぼくの…だよ…?」 「もちろん」  何回でも確認する。  信じてないわけじゃない。信じられないわけでもない。  ただ、同じ答えを聞きたいだけ。  お前は俺のものだ、って言われたいだけ。  
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