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4
耀くんが長い腕で僕をぎゅうっと抱きしめてくれる。
その大きな手に、ペアリングが光った。
うれしい
へへって笑いながら、自分の薬指の指輪を見る。
うれしい、うれしい
「碧、指輪気に入ってくれたみたいだね」
「うんっ」
そっか、良かったって耀くんが僕の頭を抱えるように撫でた。
「でもずっと、土日片っぽしか会えなくてごめんな?」
「え?」
なんでそれ、今謝るの?
「俺さ、碧に内緒でバイト行ってたんだ。真木ん家に」
「え、え?そうなの?」
全然気付かなかった。
「ペアリングは働いて買いたかったし、碧を驚かせたかった。それでバイト探してたら真木が「うちで働かない?」って言ってくれて。あいつん家配送業だからさ。で、荷物の積み下ろしとかそういう仕事、してた」
「あ…」
ますます筋肉質になった耀くんの身体。
…格好いいはずだよ
「そう…だったんだ…」
「毎週ね、会えない理由を考えるのが大変で、しかもすごい心苦しかったんだけど、でもやっぱ、びっくりさせたくて」
もう一回「ごめんね」って言って、耀くんが僕を見つめた。
「…耀くん、隠しごと上手すぎだよ?」
上目に、耀くんを睨んで言ってみる。それが耀くんにどんな風に見えてるかぐらい、もう分かってる。
綺麗な切れ長の目を見張った耀くんが、ふふっと笑った。
「可愛いなぁ。もっと怒らせてみたくなる。碧の怒った顔、絶対可愛いし綺麗だよね。…まあ怒らせたりするつもりないけど」
そう言いながら僕をぎゅうっと抱きしめる。
「覚えといて、碧。俺は碧を傷付けるような隠し事はしないし、嘘も絶対につかない」
耀くんの低い声が耳の奥に溶ける。
「…うん…」
「だけど今回みたいなサプライズは許して?碧のびっくりして喜ぶ顔、見たい」
そんな、甘えるように言うのはズルい。
でも…
お互いの右手の薬指に、キラッと光るペアリング。
「…耀くん、サプライズもすごい上手」
その右手で、耀くんの右手をきゅっと握った。
「また、びっくりさせて?」
耀くんを見上げてねだってみる。
「そうだね。次はどうしようかなぁ?」
くすっと笑った耀くんが、僕の頬にキスをした。
「楽しみにしてるね?」
僕も耀くんの頬にキスをする。
「うわ、ハードル上げられた」
くすくす笑う耀くんが、僕をゆっくりと押し倒した。
「期待に応えられるように頑張るよ」
僕を見下ろしてくる耀くんが、最高に格好よくてくらくらする。
耀くんは僕の恋人
誰より格好いい、僕の恋人
手を伸ばし、顎を少し上げてキスをねだる。
愛してるよ、って囁いた耀くんが、僕に深く口付けた。
了
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