肖像画の描き方

4/4
前へ
/20ページ
次へ
オーギュストは、やはり窓の光が逆光になっているので、 表情がわからない。 「私があなたのアトリエに行きましょう。今 日の件もあるし、そのほうが良さそうだ。 週末の日曜日の午後なら、時間があいているので、どうですか?」 「本当ですか!助かります!1」 ミルラは、思いっきりの笑顔でうなずいた。 「それならば、今日の遅刻のお詫びに、お昼をご用意します。 貴腐ワインもありますから。」 オーギュストは、ふっと微笑んだ。 「ひとつ、質問をしていいですか?」 ミルラは紙ばさみに、デッサン用紙を挟み込む手をとめた。 「あなたが女神に花をささげるとしたら・・何の花がよいと思いますか?」 オーギュストは、まっすぐな青灰色の瞳でミルラを見つめた。 ミルラは少し、考えて 「そうですねぇ・・女神さまならば、白の百合の花が定番なのでしょうけど、 私なら元気が出そうな黄色の花、マリーゴールドとかひまわりとか・・ いいと思います」 太陽のように満面の笑顔のミルラにふさわしい・・ オーギュストは感じた。 「わかりました。ありがとう」 オーギュストは軽く頭を下げて、部屋から出て行った。 一人残されたミルラは、ため息を吐いた。 「気難しい人って聞いたけど・・ ああ、お昼ごはん、なにがいいか聞いておけばよかった!!」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加