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祖父は風景画だったが、ミルラは肖像画、人物を得意とした。
彼女は、祖父よりうまかったのだ。
女性や子供を見た目よりも3割ほど、美しく、かわいらしく描くので
肖像画の依頼を受けることが多かった。
まずは祖父が依頼を受けて、実際は母がそのほとんどを描く、
というのが実態であった。
母は絵を描くことが好きだったので、喜んで祖父の代役や助手役を務めた。
祖父は母がいることで、存分にスケッチ旅行という名目の放浪と
絵を描く事を楽しんだと言える。
ある朝だった。
母が起きてアトリエの掃除をしようと、机を見ると一枚の置手紙。
文面は以下の通り。
私はこれから旅にでる。
ミルラ、頼みたいことがある。
神殿の最高神官が新しく就任したので、その肖像画を依頼されている。
お前に任せる。
今日、神殿に行って仕事をしてくれ。
私の愛するミルラへ
お前の父より
追伸
約束の時間は10時だ。
新しく就任した最高神官は気難しい人らしい。うまくやってくれ。
ミルラは置き時計を見た!
なんてこった。あの、クソ親父!!!
今、すでに10時を過ぎているではないか!!
ミルラは取りあえず、スケッチブックと、木炭を持ち、
スカートをたくし上げると、走って部屋を飛び出した。
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