0人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の頭は明日の、就任会見のスピーチ原稿のことでいっぱいだったのだ。
最年少で、最高神官の就任、
自分の立場を、年上の狡猾な神官たちに認めさせなければならない。
チーン チーン
美しい装飾の金の置時計が、約束の時間がすでに30分経ったことを
知らせた。
「もう、時間がない!今日はもう無理だ。
この画家は断ってください。遅刻するようでは困る!
すぐに別の画家を手配するように」
「わかりました。そのようにいたします」
事務官は額に汗をかきながら、頭をさげた。
「私は着替えて、執務室に戻ります」
オーギュストは広間の扉をあけて、いらだたし気に廊下を足早に歩いた。
昼過ぎに来客がある。
その前に・・・・彼はスケジュールを頭の中で組みなおしていた。
彼が階段脇の曲がり角にさしかかった時。
ボスッ・・・
それは春の突風がいきなり吹き付けてきたような、
はちみつ色の何かが重さを持ってぶっとんできた。
その瞬間、オーギュストの持っていた紙が四方にまき散らされた。
「なっ・・・」
最初のコメントを投稿しよう!