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オーギュストの体に、胸に、誰かが体当たりでぶつかってきたのだ。
「あああ、ごめんなさい、ごめんなさい・・急いでいて」
ミルラがオーギュストの腕に抱かれるように、倒れ込んでいた。
「君は・・・」
頭を打ちつけた痛みより、驚きの感情が勝っていたのだ。
オーギュストの瞳に映る女性は、それは・・・
自分の腕の中に舞い降りた女神のように思えた。
甘い芳香と、柔らかな感触と・・そして美しい。
とんでもなく大きな花束が、いきなり天空に出現して、
こちらに放り投げ渡されたように。
それは・・奇跡?
柔らかなはちみつ色の、ゆるい巻き毛と、同じ色合いの大きく見開いた瞳。
その瞳で、オーギュストを見つめている。
頬とくちびるは薔薇色で、白い首筋は少し赤く染まって、
豊かな胸は息をはずませていた。
薔薇色の唇が開いた。
「ほんっとに、ごめんなさい!お怪我は?」
ミルラはなんとか体を起こして、オーギュストをもう一度見た。
「ああ・・」
オーギュストは感嘆の言葉を、ため息をともにもらした。
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