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「私は画家のミルラと申します。
もし、お怪我や、着物が汚れてしまったなら、弁償いたしますので。
その、でも、今は急ぎで!!」
ミルラはそう言いながら、すぐに散らばったデッサン用の紙を拾い集めた。
「私っ、最高神官様にお会いしなくてはならないのでっ!
もうっ!遅刻なんです!!」
オーギュストは半身を床から起こして、現実に戻ったように首を振った。
やっと、痛みを感じたのだ。
「君が画家なのか?」
手を首に当てて、オーギュストは床に座り込んで、
紙を束ねているミルラの背中に声をかけた。
ミルラはくるりと姿勢を変えて、オーギュストに、
はちみつ色の乱れた頭をチョンと下げると
「はいっ、父の代わりで、ここに参りました。
本当に申し訳ありません。では、失礼しますっ」
ミルラが逃げるように飛び跳ね、体の向きを変えようとした時、
オーギュストがその腕をつかんだ。
「名前はっ!?」
女神が去ってしまう!!
「ミルラと言います!!あの、お話はあとで、今は急がないと!!」
ミルラはその腕から逃れようと、もがいた。
「ミルラ・・神にささげる乳香か。女神にふさわしい・・」
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